家族に告知

クリニックから社のロビーに戻り、途方に暮れた。
が、20歳で会社に入ったとき、私は受付職だったので、苦しいとき、辛いとき、私はロビーにいた。
ここは、私の第二のHOMEでもあったので、なんとか気をとりなおす。

まず、友人で仕事(副業・私は漫画家の私設秘書をしている)のパートナー・少女まんが家の吉澤ゆかりさん(仮名)に電話をした。
彼女は小学校のときの同級生で、もう10年ちかく一緒に仕事をしているだけでなく、家族のことや恋愛の悩みなどなんでも相談しあえる友人だ。
彼女との連携、仕事の交渉を経験したおかげでいまのわたしがある。

ゆかり「もしもし、お電話ありがとう」
みゆ「あの…、あのね、いま大丈夫?よくない話で申し訳ないんだけど、いまね、乳がんって告知されちゃった」

ゆかり「…そうなんだ」

こんな重い話しなのに、ゆかりちゃんは冷静に受け止めてくれる。
それが本当にありがたかった。

ゆかり「話してくれてありがとう。私の友達にも、子宮がんを克服して、元気に仕事している人いるから、大丈夫だよ」

みゆ「ありがとう」

ゆかり「いま、仕事中なの?」

みゆ「うん、昼休みで…。これから、まず母に言わなくちゃならないんで、それがツライ」

ゆかり「そうか」

みゆ「でも、頑張って言ってみるよ。聞いてくれてありがとうね!」

電話を切った。

もう昼休みは終わっていたが、事務所に戻らず、いっきに自宅の電話番号を呼び出した。

まず父が出、母に代わってもらった。母はおだやかな声だった。

みゆ「お母さん、体調大丈夫?」

母「大丈夫よ。なあに」

みゆ「あのね、今日、検査の結果をききに行ってきたんだけど、手術した方が良いって言われちゃった」

母「えええっ」

悪性だが早期なので、手術が必要ということ。小さいし、乳首から離れているのでおそらく温存手術だろうということ。
生存率は90%ということ。これから病院を決める相談をしたいこと。
現時点の疑問は、Nドクターに電話して良いということ。

ドクターに言われたことをていねいにくりかえした。

母「そんな…。心配だわー。今日、早く帰ってこられないの?」

みゆ「ごめん、今日は友達と会う約束してるんで」

母「そう。じゃ、なるべく早く帰ってきてね」

母は精神的に弱いところがあるので、落ち込まないよう、つとめて明るく話したが、
ほんとうのところ、事実が重大過ぎて、私も母もピンと来ていなかった。