「がんになった」とは言えなかった……。

何も食べられる心境ではなかったが、さすがに食べないとまずい、と思い、
午後2時頃社内コンビニでおにぎりと牛乳を買って、11階倉庫で食べる。
同僚の女性が休んでいたので、社の人にはまだ言わずにいた。
インターネットで、乳がんのサイトばかりを読み、怖くなったり励まされたりした。

その日は男性の友人と会う約束をしていた。
この日に会う前、私は彼に号泣しながら電話をしてしまっていた。
彼は私のカレシではないのに、私の友人に気があるみたいなことを言われとても傷ついてしまい、仕事が手につかなくなったので
(絶好されてもいいから、気持ちを伝えよう)
と思ったのである。

ので、再会するにはちょっとした緊張があったのだが
告知という大きなショックでそれどころではなかった。

明るく話したいのだが、さすがにテンションがあがらない。

が彼が結構喋ってくれたので、涙・涙の1日にならずに済んだ。

あまり飲めないのだが、カシス&グレープフルーツとウーロン茶を飲み、馬肉のメンチカツを食べ
お蕎麦も食べた。(全然食欲なしだが、義務というかんじ)

「(検査受けると)日記読みましたけど、大丈夫なんですか、体のほうは」
「うん、病院に通うことになった」

(ガンになっちゃったけど、友達でいてね)

うーん、重い。言えなかった。

わたしの女友達の一人は、20代で卵巣の手術をする事がきまったとき、好きな人にすがって泣いたという。
別の友人は、手術の不安から強引に男女の関係になったとも。

私は、ダメなんである。
甘えたりできないのである。我ながら、なんという「格好つけ」なんだろうと、自分にあきれはてた。
それに、もうがんになったからには、自分には恋愛できない、夢は捨てよう、という絶望的な気持ちもあった。


彼を見送って地下鉄に入ったときから、私の大不安デーははじまった。